「地図で読む百年 近畿II」 ~「近代化」と「遺産」
近代化遺産をやっておられる方(ベネさん)との話の中で、建築より土木系の遺産の方が面白いという話になり、それは、建築は単独だけど土木系はその環境とともになければ意味が無いからではないかというようなことになった。要するに、建築は移築しても意味があるが、土木系は移築という発想が湧いてこないほどその環境と一体化しているのだ。
さて、本書は大阪・兵庫・和歌山の3件について百年前の地形図と現在の地形図を見比べるという大変にわかりやすい企画であるが、これを読むと(見ると)「近代化」ということがなんとなくわかってくるような気がする。
ところで、こんなことができるは、百年もまえからきちんとした地形図を作る努力がなされてきたからであって、地形図の歴史の重みである。空中写真や衛星写真ではできない芸当である。空中写真の歴史はがんばっても60年、衛星写真のそれははもっと短いから、戦後の復興はわかってもいわゆる近代化を追いかけることはできない。
話をもどすと、「近代化」がなんとなくわかるというのは、実は、近代化とは表示された地図全体に行われているということだろう。大げさに言えば、「近代化」とは、社会という空間全体にわたって行われたということである。これは、まあ、考えてみれば当たり前のことかもしれないが、そのことが実感としてわかるのが本書であろう。
なら、近代化「遺産」とは、いったいなんなんだろうか。それは、社会空間全体に行われた近代化のシンボルに過ぎないのだろう。ならば、社会という空間の一部を占めているにすぎない建築よりも、社会という空間にぴったりと張り付いて、一体化している土木系遺産のほうが面白いのは自明なのかもしれない。
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