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2007/06/30

携帯で読む本

携帯向け電子出版はパピレスを愛用しているが、ここのジュール・ヴェルヌ本もすべて読んでしまったので、どうしようかと思ったら、青空文庫(著作権切れの著作を電子化するインターネット上の草の根活動)が携帯向けになってパピレスに置いてあることを知った。もちろん無料である。

そこで海野十三という人の1940年代前半ごろのSFを立て続けに3冊ほど読んだ。文体といい設定といいツボを刺激する。とりあえず、このあたりをがんがん楽しませてもらおうと思う。青空文庫の活動に感謝。

電子書店パピレス
青空文庫

海野作品のツボ的なところを「大宇宙遠征隊」を例に紹介しておく。この物語は、資源確保のため彗星に放射性物質を採掘に出かける遠征隊の話だ。ロケットで出かけるというところが、なかなか的を得ているように見えるが、ガスを燃焼させずに噴出することにより推進するというところが、おしいともいえるが、日本の小惑星探査機「はやぶさ」がキセノンを噴出させることにより動力を得ていたことを考えれば、あながち間違いでもない。

ロケットの内部の組織体系は、まったく旧日本帝国海軍のそれに近く、1940年代前半に書かれたという時代背景を強くあらわしているが、ロケットの組織が軍隊的というのは、たいていのSFがそれに近いという感じもする。頻繁にタバコの話が出てくるところもご愛嬌だ。1940年代前半には将来、タバコが現在のように忌み嫌われるということなど(ロケットの出現以上に)想像がつかなかったのだろう。

通信は、「無電」(=無線電信か)と呼ばれ、通信士が通信内容を通信紙に書き留めているところを見ると、モールスによって行われているようだ。モールス信号は、現在既にアマチュア無線の世界にのみ生き残っており、実用的には絶滅したと言ってもよいが、モール信号はある意味、低出力でも確実な通信が可能なデジタル無線であり、安易に電話にしなかったところにむしろ好感が持てる。

そして、電信の通信は、先の大戦中もそうであったように文語によって行われている。「大宇宙遠征隊」は1基のロケットが船団を離れて月に不時着し、そこで火星人に2人の捕虜を取られ、5つの救出部隊を向わせるが、ここのくだりは無電通信の文章を中心に話を進める。この文章がすごい。たとえば、

「早速ガラス製と思われる窓より、離れゆく月面上をみるに、本乗物の飛行を知って火星人らは痛く驚愕狼狽の模様なり」

「驚愕狼狽(きょうがくろうばい)の模様なり」というのがすごい表現だ。講談の世界のような、或いは平家物語などの古文の世界のような、そんな感じがする。すべて、無電通信のなせる業だ。

彗星があんまり太陽に近づかない、おそらく円に近い軌道をとっているのもちょっと気になるが、ま、そんな彗星もないことはないだろうと思ったり、彗星に行って帰ってくるのに15年かかるというのも、円軌道に近い彗星ならそれくらいはかかるかなと、案外、設定に無理はない。重力を回転運動ではなく、重力発生装置によって作っているところが少し気になるが、火星人の宇宙船(原文では「飛空機」)がこの重力発生装置兼重力消滅装置を推進力に使っているところから、ま、無理を承知で話の面白さを優先させたのかなと思われる。

ということで、現在の知識をもって読んでも、それなりに楽しめるところは、海野十三氏の科学的知識に支えられた素晴らしいSF小説であると思う。それにしても、この「宇宙遠征隊」が、携帯電話の画面で読まれることになろうとは、海野氏をもってしても、想像を超越した世界であるはずだ。

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