生野鉱山近代化産業遺産特別公開メモ(2013.9.29)
生野鉱山近代化産業遺産の特別公開が2013年9月29日実施され参加した。近年は年1回秋に実施しているとのこと。見て気づいたこと考えたことなどをメモしておく。
冒頭の写真は手前の白っぽい建物が中門休憩所、奥の大きな建物がオリバーフィルター室でいずれも煉瓦造で1890年の建築。中門休憩所はこの手の建物としては珍しく屋根が反っており大変美しい。
中門休憩所とオリバーフィルター室は隣接というより合体しており、休憩所の屋根は実質片側しかない。
すでにファーストインプレッションとして書いたが、ここで注目したのはアーチ部の煉瓦の積み方。長手積み的な積み方(竪積み)である。長手方向1枚分くらいの厚さのアーチであれば竪積み的な積み方はよく見るが、これだけの厚さのもので竪積みというのは私としては初見である。厚みのあるアーチで縦積みをやっているため、煉瓦に若干のテーパーを掛けている。また、キーストーンまで備えており大変手の込んだアーチ積みである。
で、フツーのアーチの積み方がどんなのかというと、写真のごとくである。小口積み的な積み方で、トンネルの場合、トンネル内部でアーチ部が長手積みになっていないと行けないという制約もあるが、トンネルほどでない壁の奥行き程度の煉瓦構造でも大抵が横積みである。
写真は京都府福知山市 旧北丹鉄道 日藤第1トンネル(2009年2月11日撮影)。内側のコンクリートは後年の補強。
お次は旧混汞(こんこう)所(現綜合事務所)。なんと1875年竣工の煉瓦造。
ここで気になったのは上の写真の部分。アーチ部の煉瓦が竪積みというのはどうもここの共通プランのようであるが、ここでは煉瓦の寸法が恐ろしく厚い。煉瓦の寸法の規格として変わり種に入る山陽型は227.3mm×107.6mm×69.7mmである(文献1)が、この69.7mmを凌駕するのではないかという厚みである。ひょっとすると煉瓦の上面(天)がこっちを向いているのかもしれない。
そのためか横の縦方向の煉瓦積みの煉瓦がえらく薄く見える。いや、ホントにこれってかなり薄いのでは?
山陽型の実例としてはJR山陽線市川橋梁(下り)橋脚(2009.2.11撮影)がある。私の実測値で219.5mm×105.2mm×66.1mmと若干薄め。混汞所アーチ部はもっとありそう。実測したい。
写真は煉瓦の薄いほうの事例、旧北吸浄水場 第一配水池(2013.7.7撮影)。寸法は222.3×106.2×49.7mmで厚み50mmを切る。旧混汞所の縦方向の煉瓦積みの煉瓦はこれに匹敵するほどの薄さに見える。
写真は旧混汞所横の擁壁。フランス積みである。実のところフランス積みというのは比較的珍しく、これ以外では北近畿では私の知る限り、新温泉町西光寺煉瓦塀と舞鶴市赤れんが博物館の2例のみである。
西光寺煉瓦塀(2006.7.8撮影)。下部がフランス積みで上部は後年の補修とみられる。
文献1:小野田滋, 2002. 鉄道構造物探見. JTB
位置図
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A:中門休憩所
B:オリバーフィルター室
C:混汞所
D:三菱購買会
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