2015.8.8 8月研修会報告
森林インストラクター兵庫からの参加者:7名
8月のFIGO会員研修会として、南丹市の芦生地域有害鳥獣対策協議会が主催し5年前にスタートした、私も植生調査に継続参加をしている芦生研究林での「知ろう、守ろう、芦生の森」の夏の植生継続調査を体験していただくことを8月の研修会にかえさせていただき、FIGOから7名が参加。
植物学者の中井猛之進博士が「植物を学ぶものは一度は芦生演習林を見るべし」と書かれたほど有名な森で、冷温帯下部に属する天然林は西日本屈指の広さがある森芦生研究林も、他の山域同様に、1日に4kgも食べるという鹿の摂食による地表植生の消失は大きい。私が頻繁に尾根や谷へと入林させていただいていた20数年前とは全く違ってきている。
FIGOの会員の中にもこの森をよく知る方もいらっしゃるし、学生の頃にここで勉強された方も多いと聞く。
5年前のブナの実生が沢山芽生えた時から、鹿柵を設置しその中にイワヒメワラビの放置区と、イワヒメワラビを根ごと絨毯のようにめくりとった除去区を設定し、1m四方のプロットごとにブナの本数、他の木本類や草本類の変化、被覆度を季節ごとに記録。また、柵外にもイワヒメワラビの除去区と放置区を設定し、おなじく継続調査をしている。
花の時期の木本類や草本類を良く見聞きしてる人でも、芽生えたばかりの頃や、花がない頃の姿、ロゼット状になって冬越しをする姿等々、それはそれは小さな葉や枯れかけの姿をパッとみて種別を判定して記録していく植生調査を体験するのは、いつも観察する時期を外れたときの植物の姿を知るという点では良い経験になり、いろいろな季節やタイミングでの植物観察にも関心が広がるきっかけにもなる。
また、自信満々だった植物名のはずなのに「ある一時期の植物の姿しか知らなかったのか。知らないことが実に多い」とガツンと頭を叩かれたようになる事も、好奇心とゴールのない勉強にもつながるのではないだろうか。
今回は時間の関係で、高柳先生が永年されているウツロ谷のABCプロジェクトの植生変化の見学と解説はなかったが、恒例のミニ講座をして下さった。
この森で研究されたことは多くの林業の発展にも使われている。たとえば熊はぎや鹿はぎ防止のために樹木の下部にビニール紐を巻いたりすること(いまは生分解性の「リンロンテープ」が使われる)や、ナラガレ防止の方法等もこの森から発信された。
私たちの命がある内には、この森が昔のような日本を代表する豊かな植生の森には戻らないだろうけれど、国定公園化の動きで今以上にオーバーユース等で荒廃するのではないかという心配もある。「大切な自然、保護しろ」だけでは、この貴重な研究の場である芦生研究林の問題は解決しない。その学術的価値の高さを理解していく上での1つの実験(研究)に、ボランティア参加するということは、森林インストラクターとしても意義があると思う。
暑い中、遠方にもかかわらず参加下さいまして本当にありがとうございました。
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